インスタグラムフォロワー数2.7万人を超える「エシカルな暮らし」を運営している株式会社Gab取締役CEOで、現役大学生の山内萌斗さん。渋谷でポイ捨ての惨状を目にしたことをきっかけに、環境問題をはじめとする社会課題を解決するために様々なサービスを展開。現在、渋谷・MIYASHITA PARKで開催中のポップアップストア「NEO〜消費が変わる、未来が変わる〜」に込めた想いや今後の展望を伺いました。
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株式会社Gab 代表取締役CEO
山内萌斗(やまうち・もえと)さん
2000年静岡県生まれ。静岡大学情報学部行動情報学科2年次休学中。東京大学起業家育成プログラムEDGE-NEXTでシリコンバレー研修選抜メンバーに選出された。株式会社タイミー主催の合宿型ビジネスコンテスト「PopOut」優勝。2019年「株式会社Gab」を立ち上げ、「社会課題解決の敷居を極限まで下げる。」をミッションに掲げ、複数の事業を展開。2021年12月から約1カ月間、渋谷MIYASHITA PARKでポップアップストア「NEO〜消費が変わる、未来が変わる〜」をプロデュース。
「Gab」を立ち上げるまでの道のり
Q山内さんが起業に興味を持ったきっかけは何ですか?
高校時代は、学校に馴染めなかった自分の経験から居場所のない生徒を助けたいと思い、教師を目指していました。しかし進路選択をする中で教師になってその学校の生徒を助けるよりも、僕が作りだすサービスを全国の学校で使ってもらうことで全ての生徒を救い日本の教育を変えたいと思ったのが、起業を志したきっかけです。
Q 大学ではどのような勉強をしていますか?
サービスを作るためにプログラミングを学びたいと思い、地元の静岡大学情報学部に進学しました。入学してすぐ、考えていた教育サービスを教授に提案したところ、良い評価を頂き、東京大学の「EDGE-NEXT」という次世代アントレプレナー育成事業のプログラムに静岡大学の代表として参加することになりました。そのプログラムでの成果が認められて、大学一年の冬にシリコンバレーでプレゼンテーションをしました。その海外研修で自分の視野の狭さに気付かされ「あったらいいな」ではなく、「なくてはならない」アイデアで起業し世界を変えていきたいと思うようになりました。
Q「Gab」を立ち上げたきっかけは何ですか?
シリコンバレー研修後はひたすら「ビジネスコンテスト」に応募する日々でした。2年生の9月に参加した合宿型ビジネスコンテストで渋谷のポイ捨て問題に注目し、ポイ捨てが多い場所を可視化しゴミ箱を屋外広告として設置するというアイデアで優勝することができました。その時に、審査員の人にポイ捨て問題やゴミ問題を解決するものは、「なくてはならない」事業だから「絶対起業した方がいい」とのアドバイスを受け、すぐに上京して「Gab」を立ち上げました。
上の写真は、シリコンバレーの研修でグーグルに行った時のもの。
多岐に渡る取り組み
Q 「Gab」ではどのような取り組みをしていますか?
まず、ビジコンで優勝したアイデアを事業化し、「MyGOMI.」というLINE公式アカウントを運営しています。ユーザーはLINEでワンタップでポイ捨てがどこにあるのかを知らせることができるサービスになっています。現在は、15万件ほどのポイ捨てデータが集まっています。コロナの影響で屋外広告の需要が減ったため、ゴミ箱を街に設置するには至りませんでした。
2つ目として、ゴミ拾いをエンタメにしたゲーム感覚ゴミ拾いイベント「清走中」を開催しています。このイベントは、LINEから送られてくるミッションを5〜6人の1チームで取り組み、拾ったゴミの種類や総量、ミッションの達成度でポイントを競います。位チームには豪華な景品も用意してあります。これまでに長野県で11回開催し、600人以上の方に参加して頂きました。その中でも参加者の6割が小学生ということが個人的にはうれしいです。小学生にとって楽しいからゴミ拾いをするという動機付けができているなと感じています。来年度は、東京や大阪、広島で開催予定です。
3つ目は、「無理なく楽しく」をモットーにインスタグラムで「エシカルな暮らし」のアカウントを運営しています。毎日、社会課題についての情報や社会課題解決につながるエシカルアイテムのレビューを発信しています。
4つ目に、オンラインストアを運営しています。インスタグラムで紹介したエシカルアイテムをオンラインストアに掲載し、インスタグラムの投稿から直接購入できるようにしました。インスタグラムを通して認識を変えるだけでなく、行動も変えるために、すぐに行動できるようにインスタグラムと連動させています。
最後に、現在、宮下パークで開催しているポップアップストア「NEO〜消費が変わる、未来が変わる〜」のようなエシカルアイテムのポップアップストアをコーディネートしています。まだ、注目されていないけど素敵な思いのあるブランドやアイテムをどういうコンセプトでどういう人に届けていくのが良いのかを提案しています。今後は、この事業を主軸にし、エシカルアイテムの流通を担っていきたいと考えています。
広がるエシカルの和と悩み
Q「エシカルな暮らし」をフォローしている人はどういう方が多いですか?
「エシカルな暮らし」のフォロワーは8.5割が女性で、年齢別で見ると30代が一番多くなっています。この傾向は、このアカウントに限ったことではなく、どのエシカル系のアカウントも同じ傾向にあります。これは、そもそもエシカルに取り組んでいる人が30代周辺の方々なので、どんなアカウントにしてもこのような傾向になることが分かりました。
Q30代の女性が多い理由に何か考えはありますか?
フォロワーの方でも、結婚や出産を経て、オーガニックや食に興味を持ったり、子どもたちが遊んでいる公園にごみが多かったことで環境問題を意識するようになったと聞きました。また、働き初めて生活にゆとりができたり、生活に向き合う場面が多い女性にとって、環境にも人にも優しいというライフスタイルが魅力的に感じる人が多いのではないかと思います。
Qフォロワーやポップストアに来る人達の反響はいかがですか?
実際にフォロワーの方に、ママ友のコミュニティで「エシカルな暮らし」の投稿が流行っていると聞きました。インスタグラムの投稿をきっかけにはじめたライフスタイルが広がっていったり、インスタグラムを通してライフスタイルが変化していることに貢献できていることを知れて嬉しかったです。
今回のポップアップストアは、9割の方がインスタグラムを見て来られます。そういう方々は、インスタグラムの投稿を毎日チェックしていたり、投稿で気になってたアイテムがあり実際に体験してみたいといった理由で来られています。また、今回のポップアップストアはボランティアスタッフとして、「エシカルな暮らし」のフォロワーの方と一緒に開催しています。スタッフの9割が高校生や大学生で、フォロワーの割合としては低いですが、「エシカルな暮らし」が深く浸透していると感じることができました。
Qインスタ運営で悩んでいることはありますか?
一番は、紹介している商品の価格が高いと感じられてしまうことです。一般的に、エシカルな商品は「高くて、ダサい」といったイメージがまだあると思います。「エシカルな暮らし」で取り扱うアイテムは、「1.デザイン性に優れている 2.感動体験がある 3.誰を助けているのか明確である」という3つの基準を設けてセレクトしています。「ダサい」というイメージに対しては、この基準でクリアできていますが、「高い」というイメージへの解決策は、まだ向き合っているところです。
エシカルな商品は、本来であれば適正な価格設定になっていますが、現在の社会では相対的に見てどうしても高いと感じてしまいます。その適正な価格に含まれている付加価値をどのように伝えていくかが重要だと考えています。だからこそ、感動体験があることや誰を助けているのかを明確にし、他者貢献による幸せを実感することで「高い」という概念を払拭できるのではないかと考えています。
期間限ストア「NEO~消費が変わる、未来が変わる〜」
Qポップアップはどのような思いで開催することになったんですか?
三井不動産が展開する新規事業「NEW POINT」からの依頼がありました。コンセプト設計やブランドとの取引を行ったのですが、その中でも一番伝えたいと考えたのは、「次の」買い物をするときは、ただのハンドクリームを買うよりも誰かを助けることができるハンドクリームを買うようになればいいなということです。きれいごとではなく直感的にお洒落だな、欲しいなと思う商品と出会える場所にしたいなと考えていました。なので、ギリシャ語で「次の」「新しい」という意味の「NEO」をテーマにしました。
キャッチコピーの「消費が変わる、未来が変わる」には、社会課題の多くが消費行動によって引き起こっており、消費行動を変えることでそれらの社会課題は解決されより良い未来に変わっていくという思いを込めています。
また、SDGsや社会課題を全面に出すのではなく、通りすがりの人がおしゃれで気になる商品があるから立ち寄るようなお店にしたいと思っていました。実際に商品を見て、感動体験をして、実は社会課題解決に繋がる商品だったという流れを意識した空間を作りました。
Qポップアップで反響の多い商品はありますか?
andew(アンジュ)の世界一やさしいチョコレートが一番売れています。このチョコレートは、現役医学部生が開発し、皮膚難病の方でも食べることができる食べ心地が優しいチョコレートになっています。乳製品も不使用でヴィーガン対応になっているだけでなく、2枚で1日分の栄養素を摂ることもできます。
また、アップサイクルの商品は反響が大きいです。例えば、海洋プラスチックからつくられたバックパックやりんごの搾りかすを含んだアップルレザー、車のエアバックからできたボディバックなどは、説明するとお客様から良い反応が得られるアイテムです。
Q私たちにまずできることは何だと思いますか?
長く使うものや、プレゼントを買う時など特別なときの買い物で、エシカルな商品を買うことは、一つの社会課題解決へのアクションだと思います。全ての消費行動を変えなきゃいけないとなると生きにくい社会になってしまうので、できるところから変えていくことが大切だと思います。
「エシカルな暮らしをすべての人に。」
Q今後の展望を教えて下さい
今後もインスタグラムの投稿をし続けていきます。インスタグラムを通した二次元での情報発信に加えて、ポップアップストアを通して三次元で体験してもらえる機会を作っていきたいです。また、海外ではスタンダードになっている、エシカルアイテムを近くのスーパーでも買えるような、エシカルアイテムの流通の部分も担っていきたいと考えています。
さらに、出た利益を再分配することで、ダイレクトに別の社会課題解決に取り組んでいきたいです。
理想とする世界として掲げている「エシカルな暮らしをすべての人に。」届けられるようになれたらいいなと考えています。
山内さんのおしゃれなエコライフ
Q山内さんにとっておしゃれなエコライフとは?
「無理なく、楽しく」
インスタグラムのアカウントのコンセプトでもありますが、まずは楽しむこと。僕がやってはいけないと思っていることは、環境問題や社会課題を怖い顔で話すことだと思います。環境問題や社会課題を真剣に捉えているあまり怖い顔をしてしまうよりも自分が一番楽しんでいることが大事だと思っています。社会課題は真剣に向き合わなきゃいけない、知識がなきゃいけないではなく、かわいいアイテムがあるし使うことで自分の心を満たしてくれるから自発的に発信したくなるという順序が大事だと考えています。
現在開催しているポップアップストア「NEO」のデザインに入れている「BUT FIRST, SMILE MORE(その前にまずはもっと笑おうよ)」には、このような想いを込めています。
Editor's note
ー取材後記ー
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長谷川瑞佳
私は、もともと「エシカルな暮らし」をフォローしていて、今回のポップアップストアでもボランティアスタッフをさせて頂いていますが、Gabの方々やスタッフの方々、そして来店されるお客様はとても優しく親しみやすいと感じています。それは、「無理なく、楽しく」エシカルな暮らしをしているからではないかなと思います。私もお話を聞くまで、社会課題解決に取り組むには、知識がなければいけないのではないか、自分も取り組めていないのではないかとシビアに捉えていました。しかし、社会課題解決に取り組むからこそ、無理なく、楽しくすることが大事だと気づくことが出来ました。
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富田真琴
SDGsというと難しいイメージがありましたが、山内さんのお話を聞く中で「無理なく楽しく」社会貢献できるということに気付かされました。実際に取材の後、エシカルアイテムとして柄の部分に竹を使った「竹の歯ブラシ」を初めて利用し、それを使うだけでも放置林対策につながる社会貢献ができる手軽さを身に染みて感じました。これを機に誕生日プレゼントをエシカルアイテムにしてみたり、友達との会話のなかでエシカルについて話してみたりと、「エシカルな暮らし」を身近で感じていければと思います。
関連リンク
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「エシカルな暮らし」公式インスタグラム
https://instagram.com/ethical_life_official?utm_medium=copy_link -
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